まじしんブログ「インフルエンザ流行中」
従来なら12月から3月の真冬に流行するインフルエンザが、今年はすでに8月に流行入りし警報レベルにまで増加した沖縄県をはじめ全国で拡大中です。昨年も9月から流行しましたが、今年はさらに1ヶ月半も早く始まってしまいました。今回の流行の主体は昨年同様インフルエンザA型(H1N1 pdm09)という2009年夏に流行した新型インフルエンザ(正式には豚インフルエンザ)の亜型が主体となっています。17年も前に流行したウイルスの末裔が密かに生き延びて覚醒したというところでしょうか。言い方を変えれば昭和時代から流行を繰り返してきたA香港型あるいはAソ連型(現在はより細かく遺伝子解析ができるのでビクトリア株とかプーケット株などと発見された地名で細かくネーミングされます)に対してはある程度基礎免疫が残っているものの、新しい変異株に対しては免疫力が不十分なため感染爆発が起きやすいということかもしれません(私個人の見解です)。
真冬に流行するイメージの強いインフルエンザですが、実際には赤道直下では1年を通してウイルスの感染が見られ、わが国でも沖縄県では真夏にしばしば小さな流行が発生していました。今回の早期流行について専門家は、1)インバウンドの増加、特に真冬の南半球からの旅行者による持ち込み、2)H1N1 pdm09以外の稀な株の存在、3)猛暑による
免疫低下、4)暑さや長雨のため屋内滞在が増えた結果の家庭内感染、などを原因に挙げていますが、3)4)などはここ数年繰り返されていることであり説得力に欠けます。いずれにしても9月の新学期の始まりとシルバーウィークの人の交わりで流行が加速されていますので、これから始まる本格的な寒く乾燥したシーズンの到来に備えねばなりません。
厚労省がワクチンの接種開始の前倒しを認め、世田谷区でも9月16日(例年は10月1日)から高齢者定期接種が始まりました。接種を検討している方には、感染してしまう前に1日でも早く受けていただくことをお勧めしています。一般的にワクチンによる感染阻止率は40〜60%程度とされていますが、免疫力の低下した高齢者においては阻止率平均50%、重症化、死亡化抑制率80%程度とされており、完璧ではないものの一定の効果が認められています。なお昨年のインフルエンザによる死亡は非高齢者も含めて6千名(ちなみに新型コロナによる死亡は2万5千名)です。
インフルエンザは欧米の健康成人にとってはタイレノール(アセトアミノフェン、処方薬カロナールのことです)を飲んで寝てれば治る病気"Flu"ですが、日本では国民皆保険制度のおかげで安価で気軽に抗ウイルス薬の処方が受けられるため、世界中のタミフル(言わずと知れた抗インフルエンザ薬です)の80%が日本で消費されていると言われています。服用すれば早期にウイルスを減少させられるので、症状改善が早まるだけでなく、乳幼児、若年者の脳症の合併や高齢者の脱水、肺炎などの二次感染あるいは持病の悪化を抑制することが可能になります。他にも吸入薬や点滴の治療薬もありますので他国よりも恵まれていると言っていいでしょう。
コロナ・パンデミック以降インフルエンザ以外の様々なウイルスの流行状況が従前と変わってしまい、かつての常識が通じない事態が様々に現れるようになりました。また世界的にワクチン忌避の傾向が見られるようになり、感染対策先進国であった米国でも複数地域で麻疹患者が発生してしまう状況です。一見鎮静化しているように見える(わが国では情報統制されているだけ)コロナ・パンデミックも終息していませんし、今後も新たなパンデミック、特に鳥インフルエンザの人への感染対策はコロナ前からの懸案事項として対策が続けられています。毎年罹患してしまう方も少なくない「たかがインフルエンザ"Flu"」ですが、その陰でどのような病原体が手ぐすね引いてデビューを待ち構えているかわかりません。流行期の今はもちろん、常日頃から「手洗い、マスク、換気」(うがいの効果は今ひとつ明らかではありません)の感染対策に努めるよう心がけたいものです。
