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まじしんブログ「あ〜眠れない」

  • 2025年5月10日
  • 読了時間: 3分

およそ2千万人の日本人がいわゆる「不眠症」だと言われている。それ以外にも一時的なストレスや環境変化、最近のネットナイーブ世代だとスマホやネットゲームのせいで物理的に睡眠時間の足らない人も増えているから実際はもっと多いかもしれない。かく言う私もその1人、30代頃の当直業務(という名のほぼ一睡もできない夜勤)がきっかけで仲間入りを果たした。加齢も加わったため今では睡眠薬の力を借りて5時間眠れればマシな方である。


成人では7時間程度の睡眠が理想とされているが、寝つけない、途中で目が醒める、二度寝ができない、ぐっすり眠った実感がない、といった理由で当クリニックでも不眠の相談は多い。断トツに多いのは寝つけないこと(入眠障害)であるが、そもそも正常な睡眠のパターンは初めに深く寝落ちしておよそ90分サイクルで浅くなったり深くなったりを繰り返しながら目覚めてゆくものであるから、スムーズに寝落ちできないと後半早めに目覚めてしまうのである。このような理由で従来からベンゾジアゼピン系睡眠導入剤でとにかく深く眠りこんで、例え短時間であっても質の良い(深い)睡眠を得るのが改善法の主流であった。


ところが最近メディアなどに登場しては「長時間睡眠に勝る質の良い睡眠などあり得ない」と主張する睡眠学の権威が現れた。メガネ、髭面の柳沢正史医師(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構機構長・教授)をご存知だろうか。脳内神経伝達物質オレキシンを発見しノーベル医学生理学賞候補としても名高いが、このオレキシンは睡眠抑制物質あるいは覚醒活動物質とも呼ばれており、現在このオレキシンの働きをブロックしてしまう(自然な眠りを誘発して起きていられなくする)睡眠薬が不眠治療の主流となっている。研究者なので直接患者さんの診療にあたっているわけではないが、世界中の睡眠学の研究データに裏打ちされた知識を滔々と話されるので、旧来の常識が非常識となり「短時間でも質の良い睡眠を目指しましょう」などと呑気なことを言っていられなくなった。


ちなみに柳沢医師、渡米前にはエンドセリンという血管収縮物質も発見している。私が大学病院在籍時代に研究していた肝硬変に伴う門脈圧亢進症の進展にも関わっているのではないかと、患者さんの血液や腹水中のエンドセリン濃度を測りまくったものだ。結果的にこの領域ではモノにならなかったが(原著論文1本書いたけど)、現在では原発性肺高血圧症という難病に関与していることが証明されエンドセリンをブロックする薬が標準治療薬の一つとして使用されている。なぜ血管の研究から睡眠学にシフトされたのかは知らないが、優秀な頭脳というのは発揮する領域が異なっても成果を上げるという事実に浅学非才の身はただただ驚愕するばかりである。


さて不眠症に悩んでいる皆さん、一度で良いから柳沢医師出演のYou Tube動画を見るなり、最新著書「今さら聞けない 睡眠の超基本(朝日新聞出版)」を読むなりしてみて下さい。何らかの新しい気づきが得られるはずです。だからと言って直ちに熟睡できるようになるわけでもないでしょうけど。


 
 

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